神様に会いにいく

【連載エッセイ】 Vol.5 伊勢神宮遥拝所(日向大神宮②)


※前回に引き続き、日向大神宮を紹介します。

日向大神宮には外宮・内宮の神様以外にもたくさんの神様が祀られている。せっかく来たので全神様にお参りしていこうと、薄暗い山の中をせっせと歩いて、めぐっていく。

岩陰や木々の間からひっそりと現れる小さな社は、広い境内の大きな社とは違って、とてもプライベート(?)な感じがする。「我の眠りを覚ますのは誰じゃ」と怒られそうで、静かに厳かに手を合わせ、写真撮らせていただきますとお願いした。

猿田彦神社と花祭神社。祀られているのは猿田彦命(サルタヒコノミコト)と木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)。

猿田彦命は、この神社の外宮に祀られているアマテラスの孫ニニギノミコト(vol.4参照)が天から降臨したときに道案内をした神様。猿田彦命はvol.3でもちらりと登場しましたが、ここでつながりましたね。

コノハナサクヤヒメは、ニニギノミコトの妻なんですけれど、猿田彦命のお隣でいいんですかね・・・?

コノハナサクヤヒメとニニギノミコトの結婚エピソードも、なかなか興味深いのです。
コノハナサクヤヒメにはイワナガヒメという姉がいて、彼女たちの父はこのふたりともをニニギノミコトに嫁がせたのでした。しかし、もともと、美しいコノハナサクヤヒメだけと結婚したかったニニギノミコトは美しくないイワナガヒメを追い返したのです。

ううーむ。いろんな意味で女性の気持ちをざわざわさせるこのエピソードを知って、イワナガヒメにも会いたくなりました。調べたら貴船神社にいらっしゃることが判明したので、またいずれ。

事代主神(コトシロヌシノカミ)の祀られている恵美須神社とアマノウズメノミコトが祀られている天鈿女(アメノウズメ)神社。

アマノウズメノミコトはアマテラスが天岩戸に閉じこもったときに、踊りで場を盛り上げて、アマテラス誘い出し作戦に大いに貢献した女神さま。そしてのちに、ニニギノミコトと一緒に天から降臨する。

アマノウズメは猿田彦の妻ということは知っていたのだけれど、その結婚の理由にはニニギノミコトが絡んでいた。

ニニギノミコトと一緒に天から降臨したとき、最初に出会ったのが猿田彦。ニニギに「あいつの名前聞いてこい」と言われて、アマノウズメは「猿田彦」という名前を聞いてきた。おかげで、国を案内してもらうことができた。が、ひととおり案内してもらったあとに、ニニギに、「お前、名前聞いたんだから、責任もってあいつんとこに残れ」と言われて、アマノウズメは猿田彦の妻になるのでした。(以上、意訳)

・・・うん、解せぬ! きっと書かれていないところで、アマノウズメと猿田彦の愛が育まれたに違いない。そういうことにしたい。そうじゃないとモヤモヤする。ニニギノミコト・・・イワナガヒメの件といい、彼は女心が分からない神なのかも・・・。恋のお願い事はしないほうがいいかもしれない。

多賀神社。アマテラスやスサノオの父母、イザナギノミコトとイザナミノミコトが祀られています。

柱の周りを回って結婚して日本の島々とたくさんの主要な神々を生んだ有名なカップル神。

彼らはアマテラスやスサノオの父母なのだけど、そこに行きつくまでにはいくつかのエピソードを介さないといけない。まず、イザナミは、いろいろな神を生む過程で、火の神を生んでしまい、出産時に火傷をして弱って死んでしまった。死んだイザナミが恋しいイザナギは、ついにイザナミに会いに黄泉の国に行ってしまう。そこでイザナギは、変わり果てたイザナミを見て驚いて逃げ帰ってくる。ああ、やばかったということで、無事に帰還したイザナギは、黄泉の国の穢れを払うために川で身を清めた。

そのとき、左目を洗って生まれたのがアマテラス。右目を洗って生まれたのがツキヨミノミコト。そして鼻を洗って生まれたのがスサノオ。

偉い神様たちはやることなすこと神産みになるようです。イザナミの出産の苦労はなんだったんだ・・・。

日向大神宮の隣にある神田稲荷神社を後ろから見たところ。
ここは倉稲魂神(ウガノミタマノカミ)と、保食神(ウケモチノカミ)を祀っているそうです。どちらも食物の神。

ウガノミタマノカミは、いわゆるお稲荷様。

ウケモチノカミは、アマテラスのもうひとりの弟・ツキヨミノカミに理不尽な理由で殺されるんですよね・・・。アマテラス・・・心労の絶えない姉・・・。このあたりはまた、次回に。

たくさんの神様とそのエピソードに頭の中がいっぱいいっぱいになって歩いてたら、こんなものを見つけました。

ん? 遥拝所?

すかさずスマホで調べる現代人のわたし。
遥拝所とは遠く離れたところから神仏を拝むための場所。なるほど。京都から伊勢神宮にお参りできるわけですな。行ってみよう。

と、気楽な気持ちで出発したら、とっても山登りだった。

徒歩10分って書いてあったけれど、山登り10分か、ぬぬぬ、またしても、だまされた・・・と、不満げな顔の寒竹。

伊勢にお参りできるんだから、少々の苦労はしなくてはいけない。が、こんなことなら電車乗って伊勢神宮まで行った方が楽なんじゃないか(そんなことはない)と、血迷い始めた頃に、てっぺんに出た。

頂に鳥居(だけ)があった。

そして振り返ると京都の町が見下ろせる。赤い鳥居は平安神宮。
おー、絶景!(高い所が好きなので機嫌が直る)。

無事、遥拝所から伊勢神宮にお参りできました。先日は、無知なまま、勉強不足過ぎるまま、お参りしてごめんなさい。

それにしても、遠く離れた場所から拝めるなんて、不思議で興味深いルールだ。そういうルールは、どうやって生まれるんだろう。信仰なんだから、それぞれが自分ルールで決めてしまえばいいような気もするし、それではあんまりにもバラバラで信仰自体が薄れて消えてしまいそうな気もする。やっぱり、伝統に基づいた形式がちゃんとあったほうがいいのだろう。でも、あまりにもがちがちの厳しいルールだと守れないから続かない。そのほどよいところはどうやって決まっていくのだろう。 信じるためのルールはたぶん、ゆるすぎても厳しすぎてもダメなのだ。

いままで「そういうものだ」と思って自然にやりすごしていたことを改めて考え始めて、頭の中が疑問符だらけになる。でもそれは不信感をともなう疑問ではなくて、もっと知りたいという、わくわくするような疑問だ。 神仏や歴史に関して一般常識以下の案内人だけど、きっと、連載を続けていくうちに、わたしも、そして読んでくれている人も、神様にちょっと詳しくなっているはず。

次は、アマテラスの弟でスサノオの兄、ツキヨミノミコトに会いにいってきます。

施設情報

日向大神宮

神社

日向大神宮

この記事を書いた人

寒竹泉美

小説家・医学博士

寒竹泉美

岡山生まれ、広島育ち。京都に住んで15年が過ぎました。ペット可の古い貸家で白黒猫のモーちゃんと夫と、マイペースに暮らしています。

関連記事

人気記事ランキング

まだデータがありません。

読みもの

特集

Menu