神様に会いにいく

【連載エッセイ】 Vol.14 アメノオシホミミ尊(許波多神社:木幡)


前回はニニギの息子、海彦山彦のエピソードを紹介しましたが、話を少し遡り、今回はニニギの父・アメノオシホミミが主役です。

というのも、ニニギ尊がアマテラス様の孫ということはわかったけれど、ニニギ尊のエピソードを知れば知るほど親の顔が見てみたいという気持ちになりまして、調べたら、天之忍穂耳(アメノオシホミミ)尊という神様がお父さんでした。

つまり、アメノオシホミミはアマテラスの息子なのですが・・・

あれ? アマテラス様、誰かと結婚したっけ・・・?
アマテラス様のパートナーになれる男神など、そうそういない気が・・・。

実は、アマテラスは結婚していないのです。アメノオシホミミはアマテラスとその弟スサノオの姉弟対決のときに生まれた神様なのです。

vol.3で、暴れん坊のスサノオが「黄泉の国のママン(イザナミ)に会いに行く前に、姉ちゃん会いに来たよー!」とアマテラスのもとへやってきて、それを見たアマテラスが「わたしの国を奪いに来たのね!」と誤解して武装して出迎えた話を紹介しました。そこでは詳しく触れなかったのですが、このとき、スサノオは姉の誤解を解くためにある賭けをしたのです。

さあ賭け(誓約)をしようじゃないか、お姉ちゃん。
いいわよ、弟。

というわけで、アマテラスがスサノオの剣をかみ砕いて、ふっと息を吐くと女神が3柱生まれました。その次に、スサノオがアマテラスの勾玉をかみ砕いて、ふっと吐くと、男神が5柱生まれました。

スサノオの剣から生まれたので、女神がスサノオの子。
アマテラスの勾玉から生まれたので、男神がアマテラスの子。

心優しい女神を生んだスサノオは国を攻める気がないことを証明できた・・・

・・・そうです。

ぽかーん。

なんで?

そもそも、どっちがどっちの子なのか、その判断基準もわかりにくい。
・・・まあ、でも、神さまたちがそれでいいなら、それでいいですけど・・・。

このときに生まれた男神5柱の中の1柱がアメノオシホミミなのです。つまり、アマテラスの息子というわけです。でも父は弟のスサノオでは・・・? と思うのだけど、なぜかここで生まれた神様たちは、親がひとりなのです。イザナギがひとりで川で身を清めて生まれたアマテラスやスサノオは、母はイザナミということになっているのになあ。
ううむ。解せぬ。が、神さまには神さまのルールがあるのでしょう。

というわけで、アメノオシホミミ尊が祀られている京都の神社を探してみると、宇治に許波多神社という名前の神社がふたつありました。

今回はそのひとつ、木幡にある許波多神社を訪ねました。

住宅に挟まれた参道。

アメノオシホミミの正式名称は「正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊」。「正哉吾勝勝速日」の部分は、「俺は賭けに勝ったぞ~!(by スサノオ)」みたいな意味だそうで、ますます誰の子かわからなくなりますが、つっこみ始めたらキリがないので、ここはとりあえず、アメノオシホミミがアマテラスの息子という設定を受け入れましょう・・・。

一緒に母のアマテラス様と、同じときに生まれた兄弟のアマツヒコネ命が祀られています。

参道を抜けると「宇治陵」と書かれた石標が。

森の中を進むと、小さな陵があった。

藤原基経のお墓だと伝えられているそうです。

境内の入り口。
手前の神楽殿では、小学生の女の子がふたりでダンスの練習をしていた。神楽殿なのでちょうどよかろう。ダンスは今風だったけど。

拝殿。

ここにアメノオシホミミ尊が祀られていることをどのくらいの人が知っているだろう。アメノオシホミミ尊は農業の神様。周りに田んぼや畑がないから、アメノオシホミミ様を目当てに来る人は少ないかもしれない。

でも、そんなふうにひっそり祀られている方が、アメノオシホミミ様の性に合っていると思う。

なぜならこの神様は、母・アマテラスに「天から降りて地上を治めてきなさい」と命令され、いったん下界に降りかけたのに、物騒な様子を見て、やーめたっと引き返してきた神様なのです。さらに、再度命令が下ったときに、やっぱり嫌がって、自分の息子ニニギを代わりに行かせた神様なのです。

・・・親の顔が見てみたいと思っていたけれど、こんなへたれな父だったとは・・・。ニニギ尊は、父を反面教師にして女心の分からぬ我が道を行く神様に育ってしまったのだろうか・・・。

しかし、アマテラス様の頭痛の種が多すぎますね。暴れん坊の弟スサノオに気の短い弟ツキヨミに、へたれな息子アメノオシホミミ・・・。

取材を終えて帰るころには、女の子たちはダンス遊びをやめて、別のごっこ遊びをしていた。

そういえば、子供のころ、神社が遊び場というシチュエーションに憧れた。わたしは団地育ちなので、団地の公園が遊び場で、近所に神社がなかった。急な坂を降りたところにあって、お祭りのときに行くくらいだった。漫画やアニメで、神社で遊んでいる子たちを見て、なんだかうらやましかった。思春期になったら、神社で待ち合わせたり、恋人と逢引したり・・・なんてことにも憧れた。

でも大人になって、初詣や観光でしか訪れなくなって、すっかりそんな気持ちを忘れていた。遊んでいる女の子たちを見て、忘れものを取り戻したような気持ちがした。

施設情報

許波多(こはた)神社:木幡

神社

許波多(こはた)神社:木幡
  • 京都府宇治市木幡東中1

この記事を書いた人

寒竹泉美

小説家・医学博士

寒竹泉美

岡山生まれ、広島育ち。京都に住んで15年が過ぎました。ペット可の古い貸家で白黒猫のモーちゃんと夫と、マイペースに暮らしています。

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