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【月刊レポート】 Vol.2 高松神明神社の色白ハンサムな「神明地蔵」


新町通と姉小路通の交差点を西へ入ると北側に見えてくる「一の鳥居」。潜ると細長い敷地の奥に一本のオガタマノキに護られるように白い「二の鳥居」と小さな本殿が建っています。

高松神明神社の創建は平安時代中期の920年。醍醐天皇の息子・源高明(みなもとのたかあきら)が邸宅内に鎮守社として創建したのが始まりです。天照大神、八幡大神、春日大神の三柱を祀り「開運・厄除けの神明さん」として古くから信仰されていますが、その境内に小さな石造りのお地蔵さまが祀られています。

明治初期より神仏は分離して祀ることになったことから現在、神社の境内で仏さまに会えることはほとんどありません。ではなぜ神社にお地蔵さまが祀られているのでしょう?

境内北西にいらっしゃる「神明地蔵」と呼ばれるこのお地蔵さまは、今から400年前に活躍した戦国時代の智将・真田幸村(信繁)が関ヶ原の戦いで敗れ、流罪となった時に住んだ和歌山県高野山山麓九度山の屋敷跡に祀られていたといいます。

その屋敷跡はのちに「善名称院(通称:真田庵)」という真言宗のお寺とになり、先述した真田家念持仏の地蔵尊(2体あった)と1体の毘沙門天を祀っていました。

一方の高松神明神社。源高明の邸宅「高松殿」は平安時代に重要な歴史の舞台となります。平安中期には道長をはじめとする藤原氏一族が居住し栄華を極めましたが、平安時代末期の保元の乱では後白河天皇方の本拠地となり、のちの平治の乱で邸宅は焼失、鎮守社のみが残されました。さらに室町時代の応仁の乱でも戦火に見舞われたため徐々に衰退していきます。

1565年には神社と寺院が習合した「高松神明宮宝性院」となり、東寺の宝菩提院の末寺として再スタートを切りましたが、江戸時代に何度か大きな火災に見舞われることとなります。

特に大変だったのが天明の大火(1788年)だそうで、全焼した伽藍を再建するためにお金が必要になったと思われます。そんな時、当時の宝性院のお坊さんが九度山を訪ね、善名称院から幸村ゆかりのお地蔵さま一体を拝領し京都へ持ち帰って宝性院に安置したのが「神明地蔵」です。

最強の徳川軍に対し、少ない部隊ながら善戦し散っていった真田幸村。亡くなって150年以上経っていた江戸時代中期でも真田人気は凄まじく、お地蔵さまへのお参りが絶えなかったため、たった3年で本殿は再建されるに至りました。

そのお地蔵さま、近年まで年に2度(地蔵盆と秋祭り)のみのご開扉でしたが、現在はガラス越しに通年拝観できるようになりました。

像高40cm、石造りながら色白でツヤを感じ、肉感的なお身体に、三道が刻まれた太い首がキュッと伸び、大きく山なりの眉と小さな唇が特徴な知性溢れるお顔が印象的です。

眉、耳、衣の流れ、錫杖や宝珠といった持ち物、台座の蓮の花びらなど、全体的に「丸み」を持たせ、柔和なイメージを感じさせます。

右手に持っている錫杖をコンパクトに密着させ、宝珠を優しく左手に乗せ、「あなたの元に出向き、この玉で願いを叶えてあげますよ」と言わんばかりの、優しく聡明な眼差しが人々に安らぎを与えてくださいます。

きっと真田幸村も、このお地蔵さまに癒しと安らぎを感じていたのでしょうね。

さて、その後の宝性院です。

明治時代の初めに起きた「神仏分離令」により宝性院は廃寺となり高松神明神社に改められました。境内は神さまの棲む場所になり、お地蔵さまは行き場を失い廃仏の憂き目に遭いましたが、人々に愛されたお地蔵さまを粗末に扱うことはできないと社務所に移され、神職が個人の仏壇という形で祀ることによってかくまったのです。

そして神仏分離の混乱から20年以上経った1893年、境内に現在の地蔵堂が再建されお地蔵さまは安住の地を得られたのです。

開かれたお地蔵さまのお厨子(入れ物)の扉には邪魔者が入らないようにイカツイ仁王像が彫金されているのがわかります。
仁王像といえばお寺の門にいらっしゃる仏さま。つまり、この小さなお厨子が一つのお寺。
高松神明宮宝性院はこの小さなお厨子となり、高松神明神社の中に今でも息づいていると言えるのではないでしょうか。

訪れたならお堂下の台石を撫でてくださいね。幸村の知恵と勇気が授かるそうですよ。

施設情報

高松神明神社

神社

高松神明神社
  • 京都市中京区姉小路釜座東入津軽町790
  • 075-231-8386
  • 9:00~18:00

この記事を書いた人

政田マリ

仏像ナビゲーター

政田マリ

月に一度素敵な仏さまをご案内する『月イチ仏像ガイド』主催。京都の魅力、仏像の魅力を世に広めるために仏像ガイドとしての活動しています。日本仏像検定A級。年季の入った『カープ女子』です。

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