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【月刊レポート】 Vol.5 御室・蓮華寺、癒しの石仏群に逢いに行く


仁和寺の東側、龍安寺へ続く「きぬかけの道」は4月になると桜並木が薄ピンクに色づきます。その奥に続く美しい白壁のお寺が今回ご案内するお寺です。

真言宗御室派の別格本山、五智山蓮華寺。

西側の門から階段を上がり境内に入ると真新しい本堂の前にずらりと並ぶ圧巻の石仏群。
前後2列になり並んでいて、みんな優しく穏やかな表情をしています。今日はその癒しの石仏たちをご紹介しましょう。

蓮華寺の歴史に関しては謎が多く、天喜5年(1057年)に藤原康基が広沢池そばに建立し、徳治年間(1306年~1308年)に後宇多天皇が中興し自ら住職となった、と伝わっていますが、応仁の乱で焼失をして以降荒廃してしまいました。

その後、鳴滝へ移転しましたが、山の中腹にあったためライフラインが不便で生活しづらく、再び衰退していきますが、寛永12年(1635年)、江戸の豪商だった樋口平太夫がこの地に立ち寄り、荒れた蓮華寺を見て「自分が復興せねば!」と思い立ち、伽藍の整備と造仏に取り掛かります。

樋口平太夫はもともと豊臣家の家臣でしたが、大坂の陣で敗戦して捕まり、仲間たちは処刑されますが平太夫は助かり江戸へと移り住みます。 その後、木材商として成功し財をなしたのですが、亡くなっていった仲間への懺悔の気持ちが拭えず、晩年は全国の寺社を巡礼する旅へと出かけます。 坂東や秩父、西国の三十三所を巡り、もちろんこの京都にも入りました。古刹神護寺を訪ねようと鳴滝の道を通った時に蓮華寺に立ち寄ったと言われています。

復興を誓ってからすぐ仁和寺の覚深法親王のバックアップも受け堂宇を建立、 江戸の坦称上人に依頼をして石仏群を造仏し、鳴滝の山腹へと運んだそうです。
明治時代には再び荒廃しましたが、昭和3年(1928年)に仁和寺の僧・慈海上人が現在地へと移転させ、今に至ります。

2015年に完成したばかりの真新しい本堂の中央には本尊の阿弥陀如来坐像が祀られ、不動明王と弘法大師が脇を固めています。自然光の入る明るい堂内、天井には大きな梁、内陣の円柱には美しい木目が浮かび、荘厳でありながら落ち着く空間です。

本堂東側の不動堂はとても大きく立派!毎月28日にはここで護摩供が行われるほか、毎年土用の丑の日の病気平癒・往生安楽を祈願する「きゅうり封じ」は有名で、京都の夏の風物詩にもなっています。

実は私、山門から入って一番目立つ建物がこの不動堂だったので、ここが本堂で中のお不動さまがご本尊だとずっと思い込んでいました。
ご住職に伺うと、そう思われる方があまりにも多いとのことで、このままではご本尊の阿弥陀さまに申し訳ない、と思われて2年前に本堂を目立つよう立派に建て直したそうです。

さて、そんな蓮華寺の境内に並ぶ石仏群のお話をしていきましょう。

境内の南に一列に並ぶのは五体の仏さまは五智如来(ごちにょらい)です。
東(写真の手前)から薬師如来、宝生(ほうしょう)如来、大日如来、阿弥陀如来、釈迦如来の順で並びます。 五智如来は、大日如来を中心とし宇宙そのものを象徴したもので、太陽のごとくこの世のすべてのものを慈しみ、知恵と五穀豊穣の功徳を表しています。

頭の螺髪(らほつ・丸い粒)も丁寧に一粒ずつ彫られ、少し前傾姿勢で、優しく語りかけくれそうな柔らかい体躯をしています。

一番西側にいる不空成就如来です。 頭が大きめに作られていて、可愛らしさを感じます。 衣紋も深く彫り込まれ、優しい眉のラインやまぶたの重なり、唇の際(きわ)までしっかり立体感があり、露仏特有の磨耗をあまり感じません。

一般的に石仏だと花崗岩を使用することが多いのですが、この石仏は安山岩から作 られています。柔らかで加工がしやすいのに風化しにくいという特質で鉱物を多く 含むので少し黒っぽく見えます。

天気により表情が変わって見えるのもこの石の特徴で、しっとり雨の日には重厚感 を感じ、写真ような快晴の日は軽やかで爽やかな表情に見えるのです。

後ろもう一列は虚空蔵菩薩、観音菩薩 、地蔵菩薩像、聖僧像などが並びます。 どれも優しく可愛らしい癒しの表情をしています。

なんだかホッとするような安心感が全ての石仏から感じられます。

実はこの石仏群は昭和33年まで鳴滝の山腹にありました。 お寺自体は先述の通り、昭和3年に山を下りこの地に移転しましたが、石仏群は重い上に数も多く、山から下ろせずにいたのです。
その間、石仏は誰も管理していない状態だったので盗難や損壊が相次ぎました。このままでは大変なことになる!と蓮華寺の檀家総代が中心となって山からケーブルを使って一体一体下ろし、昭和33年に石仏群はここに安住の地を得たのです。

いろんなことがあったよなぁ…。そんなつぶやきが聞こえてきそう。
丸く力みのない背中は今、心穏やかに今、京を見守っていらっしゃいます。

ちなみに・・・

広沢池の西、観音島にいらっしゃる千手観音立像は以前鳴滝にいらっしゃった石仏 群の一体なんです。 もちろん盗難されたものではなく蓮華寺がここの場所に貸しているそうですよ。

施設情報

蓮華寺(御室)

寺院

蓮華寺(御室)
  • 京都市右京区御室大内20
  • 075-462-5300
  • 8:00~17:00(冬季12月~2月は16:00まで)
  • http://rengezi.com/

この記事を書いた人

政田マリ

仏像ナビゲーター

政田マリ

月に一度素敵な仏さまをご案内する『月イチ仏像ガイド』主催。京都の魅力、仏像の魅力を世に広めるために仏像ガイドとしての活動しています。日本仏像検定A級。年季の入った『カープ女子』です。

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