神様に会いにいく

【連載エッセイ】Vol.25 スサノオ一家と大国主(粟田神社)


今日はvol.23で会いにいった大国主命とスサノオ尊の<婿・舅対決>のお話から始めます。

これ、覚えていますか? 八坂神社の大国主社の前にあった像です。

大国主という名は、これからは国の主としておさめよ、とスサノオから与えられた名で、若かりし大国主さまはオオムナヂと名乗っておりました。
この像はその若かりし彼・オオムナジが、皮をむかれて赤裸のウサギを助けてやってる場面です。

実はこのときオオムナヂはひとりではなくて、兄神たちの後ろを歩いていました。ウサギは、先に兄神たちに出会い、「海水で洗えばいい」と意地悪を言われ、それを信じて海に浸かってしまったせいで、塩がしみてひりひりしてもだえ苦しんでいました。

そこへオオムナヂがやってきて、真水で洗ってガマの穂にくるまればいいと教えてあげました。ウサギは無事、もとのふわふわのウサギに戻ったのでした。

感謝したウサギは予言します。
「あなたは因幡の国のヤガミヒメさまと結婚されるでしょう」

先に到着していた兄たちはヤガミヒメに求婚するのですが断られ、ヤガミヒメはウサギの予言通り、オオムナヂを選びます。

もともとオオムナヂをいじめていた兄たちは「何でお前が!」と大激怒し、オオムナヂをだまして殺してしまいます。

…ひどい。

しかし、オオムナヂの母の願いが聞き届けられて、高天原の偉い神様・カミムスビが生き返らせます。

※ちなみにカミムスビ様は、vol.24で登場したちっちゃい神様スクナビコナの親神です。

復活したオオムナヂは、またしても兄神に殺され、母に何とか生き返らせてもらいますが、見つかったらまた殺されるので「根の国」(=黄泉の国)に避難します。

根の国にはスサノオが住んでいました。

※根の国はイザナミ様のいるところ。死んだおかあちゃん(イザナミ)のいる根の国に行きたいと泣きわめいていたスサノオでしたが、あれやこれやとあって、最終的にここに落ち着いた…のかな…。

根の国にやってきてすぐに、オオムナヂはスサノオの娘・スセリビメと恋に落ちてしまいます。しかし、それが気に入らないスサノオはオオムナヂを何度もひどい目に合わせます。が、その都度スセリビメが助け、オオムナヂは何とか生き延びます。

ようやくオオムナヂを認めたスサノオは、スセリビメを妻にして出雲の国を治めよと「大国主」の名を与えたのでした。

※そしてスクナビコナ登場の話(vol.24)につながります。

以上、男の嫉妬は怖いですな…という話でした!

今でこそ、あんなふくふく姿で知られている大国主さんですが、若かりし頃はモテまくりです。なにせ、最終的に大国主は6柱の女神と結婚し181柱の子をつくりますから。

…って、スサノオの娘をもらっといて浮気しまくり…?

というか、ヤガミヒメはどうなった?

大国主様をめぐる男の嫉妬編をお届けしましたが、どうやら女の嫉妬編もお届けしなくてはなりませんな。まあ、それは、また今度の機会に。

というわけで、前置きが長くなりましたが、今の話に登場する神々が祀られている粟田神社にやってきました。

平安神宮がある岡崎地域の少し南にある神社です。

この階段の左側に、後で紹介する大人気の末社「鍛冶神社」がありますが、まずは階段を上って本殿へ。

本殿です。祀られているのは、

建速素盞嗚尊(たけはやすさのおのみこと)

大己貴命(おおなむちのみこと)

八大王子命(はちだいおうじのみこと)
(八嶋士奴美神・五十猛神・大屋彦神・大屋媛神・抓津媛神・須勢理媛神・大歳神・宇迦之御魂神)

奇稲田比賣命(くしいなだひめのみこと)

神大市比賣命(かむおおいちひめのみこと)

佐須良比賣命(さすらひめのみこと)

漢字だと分かりにくいですが、スサノオ様とオオムナヂ=大国主様が仲良く祀られております。そして、スサノオの子神である八大王子命の中に、大国主と結婚した須勢理媛神=スセリビメ神がいらっしゃいます。

クシイナダヒメとカムオオイチヒメはスサノオの妻。
サスラヒメはスセリビメと同一神ともいわれております。

まとめると、ここには、大国主と妻のスセリビメ、そしてスセリビメの両親と兄弟姉妹たちがいらっしゃるわけです。さすがの大国主様も、ここまでがっちりと一族でガードを固められてしまっては、他の妻のところに遊びにいけないだろうな…。少なくともここにいるときは…。

しかし、たくさんのドラマチックなエピソードをもち、こんなにたくさんの神々が子として関連づけられている大国主様。きっと、単に偉くて尊い神として信仰されていたのではなく、人々のなみなみならぬ愛情を注がれた神様なのだろうと思う。思わず物語りたくなるような神様なのだ。

本殿の裏手。
左は多賀社。イザナミ様とイザナギ様が祀られています。

そしてこちらが、出世恵比寿社。

最近、神社にお参りにいくときは、神様に会いに行くという気持ちなので、お願い事をすることはなかったのですが、思わず本気で願ってしまった。

(もう少し小説家として出世できますように……)

そして、階段を降りて右手に行くと「鍛冶神社」があります。
このあたり(粟田口)に住んでいた有名な刀工を祀った神社。
刀をイケメン擬人化したゲームの愛好家の聖地になっているそうです。

イケメンがたくさん出てくるゲームなので、ファンは女子が多く、おかげで刀剣が好きになる女子が増えたとか。

いやはや、物語の力ってすごい。

刀がイケメンの姿になって甘いボイスでしゃべってくれたりすることは、現実にはまず起こらないわけだけれど、もしそうだったら…と想像してつくられた魅力的な物語があって、その物語を楽しんだ人たちが、今度は本当の現実の刀の物語に興味が湧いてきて、もっと知りたくなってくる…。

そういうの、いいな。
わたしが神様の物語を紐解いて、神社をめぐっているのと同じだ。

物語が噓でも構わない。それがきっかけになって世界が広がっていく。目に見えているものはすべてではないかもしれない。想像することで、新しい世界が開けてくる。現実はひとつではない。見方によって変わるのだ。

などと、考えをめぐらせながら神社を後にした。

思い入れを生み出し、人やモノの心をつなぐ物語の力…
何かここにヒントがありそうだ…

出世のヒントが…

施設情報

粟田神社

神社

粟田神社

この記事を書いた人

寒竹泉美

小説家・医学博士

寒竹泉美

岡山生まれ、広島育ち。京都に住んで15年が過ぎました。ペット可の古い貸家で白黒猫のモーちゃんと夫と、マイペースに暮らしています。

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